新型コロナウイルス感染症で地域医療介護職が困っていること-ハートケアステーションのアンケート調査結果より-

2020年05月14日

新型コロナウイルスと共存しなければならないであろうこれからの社会を考えてみると、高度医療機関での集中治療管理の更なる充実はもちろんのことですが、まだ十分には手をつけられていない地域医療、特に致死率の高い基礎疾患を多く抱える高齢者への対応について考えていく必要があります。そこには、病院のように医師や看護師だけではなく、介護の中心は家族であったり、または小さな事業所で構成された多施設多職種でのサポートとなってきます。発熱患者に対して地域医療介護職がどのように対応するべきか、患者家族が在宅療養の継続を希望した場合に、ただでさえ十分な防護服の備蓄がない中で、私たち医療介護従事者自身の安全をいかに確保するか、保健所から入院指示があった場合に、地域で受け入れてくれる病院施設を確保できるのか、多くの問題を抱えているのが現状です。

そこで、いま地域の最前線で在宅療養を支援している皆さんが困っていること・悩んでいることについて、より多くの方の声を聞くために、全国の医療従事者がクラウド上で集まるプラットフォーム「ハートケアステーション 」を用いて、2020年5月にアンケート調査を行いました。

アンケートは ①コロナ陽性者・発熱者などへの対応 ②医療物品の不足 ③利用者や市民からの差別的行為 ④職場での様々なストレス ⑤発熱高齢者の病院確保 ⑥コロナ感染症に関する情報の入手 と6つの質問と、最後に自由記載欄を設けました。

アンケートは、15都府県から40名の方にご回答いただき、内訳は女性が75%、年代は30代から60代まで広く分布しております。以下に調査結果を報告いたします。

 

①医療物品の確保

グラフ1.PNG 

②新型コロナウイルス陽性者、濃厚接触者、発熱者への対応

グラフ2.PNG 

③職場における業務過多、精神的・身体的ストレス

グラフ3.PNG

「困っている・非常に困っている」の割合を見ると、1. 医療物品の不足65% 2. コロナ陽性者・発熱者などへの対応57% 3. 職場での様々なストレス45% 4. 病院の確保35% 5. 地域における差別的行為32% 6. コロナ感染症対策などの情報20%という結果でした。やはり最も困っているものに医療物資不足があがっており、一方でコロナ対策や最新情報についてはSNSなどの情報から上手に取り入れていることが伺われます。

 

それぞれについての対策を考えてみます。

 

①医療物品の確保

医療物品の確保に難渋している地域の医療従事者は過半数を超えており、サージカルマスクと答えた方が最も多く、続いて消毒用アルコール、防護服があがっています。GW時期に行ったアンケート調査ですが、この時点でも、国からの支援が地域の現場まではなかなか届いておらず、業務への支障や2次感染リスクなど、厳しい状況に直面しています。地域の医療従事者は、総合病院などと比べると小さな事業所が多く、十分な感染防護ができる医療物資の備蓄することが困難な現状です。地域では、まずは「もの」を公平に提供・分配できるようなネットワーク体制が重要になることでしょう。たとえば、現時点では医師会からのマスクの配給は、事業所単位で決められており、スタッフ数や患者数などを加味したものではありません。ここは、これからの課題になると考えます。

 

②新型コロナウイルス陽性者、濃厚接触者、発熱者への対応

2020年4月末に日本プライマリ・ケア連合学会が診療所・病院におけるプライマリ・ケアのための情報サイト を公開し、日本在宅医療連合学会においても同様にCOVID-19関連情報のページ を立ち上げ、地域におけるコロナ陽性者および家族への対応指針が述べられています。

発熱患者に対する訪問診療の指針については、先日、本コラム でも取り上げております。当法人でも、在宅療養をしている患者の往診理由で最も多いものが「発熱」です。感染防止の自主隔離ができない老老介護の高齢者が発熱した場合には?、在宅療養の継続を望んでいても入院適応となってしまうのか?、アドバンスケアプランニング(ACP)の重要性についても触れています。

 

これらのアンケート結果より、医療資源や人員の確保が逼迫する中でも、患者が住み慣れた地域で安心して療養生活が送れるようサポートするために、常に感染のリスクと向き合いながら、発熱患者や新型コロナウイルス感染が疑われる患者の対応にあたっている現状が明らかになりました。地域在宅の現場で、私たちが普段提供している治療やケアを継続するためには、「もの」「ひと」「しくみ」が必要となります。今後は、公的機関による更なる物資の支援強化が重要になり、既成概念にとらわれない新たな発想を用いた人的資源の供給や、地域連携のシステムの構築が望まれます。

私たち法人としても、このような危機的状況での経験を、未来に向けての更なる進化を促進するためチャンスであると前向きに捉え、今後さらに需要が高まるであろう地域における在宅医療・ケアの質向上に繋げていきたいと思います。

アンケート結果に関する資料は下記リンクをご参照ください。

ハートケアステーション

 

弓野 大

 

参考資料

 

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