「どうやって生きていきたいか」 に耳を傾け、その方だけに向き合える 時間を重ねていきたい。
2020年1月に新設された「ゆみの訪問看護ステーション」をゼロから作り上げている、創設メンバーのひとり。柔らかく元気な笑顔で患者さんに向き合う一方、重症な患者さんの状態変化にくまなく目を配る姿勢は、看護師としての高いプロフェッショナリズムを感じます。自身も地域のひとりの生活者として、また時には孫のような存在として、患者さんとの適切な距離感を大切に育む看護を提供しています。
入退院を繰り返す患者さんを目の当たりにして
ご自宅で生活したいと願う方の力になりたいと思った。
大学病院に勤めていた頃は数十人の患者さんを担当していましたが、肺炎や心不全を繰り返す方や、転倒して骨折などで入退院を繰り返す患者さんが多くいらっしゃいました。入院中はADL(日常生活動作)が下がってしまい、気力が低下してしまうことも多く、「もっと地域や在宅で出来ることはないか。病気を抱えながらも、お家で生活したいと願う方の力になりたい。」と考えるきっかけになりました。
また、目の前の患者さんが、これまでどのように生きてきたか、これからどのように生活していきたいかを知りたいと思っても、深いコミュニケーションを取る時間がなく、日々やるべきことに追われる看護になっているのではないかと思うこともありました。そのような思いでいる中、在宅医療の学会で弓野理事長の講演を聞き、YUMINOの取り組みを知りました。YUMINOではより患者さん一人ひとりに寄り添う医療を提供してご自宅で安心して過ごすための支援が出来るのではないか、とYUMINOへの入職を決めました。
現在は訪問看護ステーションで、在宅療養を送る患者さんのケアを行っています。循環器疾患に強みを持つYUMINOの訪問看護ステーションとして、重症心不全や人工心臓の患者さんへの看護も積極的に行っている点が特徴です。1日およそ6名の患者さんを、電動自転車等で訪問しています。訪問中は目の前の患者さんのことだけを考えられる時間なので、病気のことや、これからどんな風に生活したいか、その方の人生について一緒に思いを巡らせることができます。
地域のスタッフと連携し
患者さんと離れているときも、「次の展開をどう対応するべきか」とより良い選択を考えています。地域で患者さんを支えていくうえでは、YUMINO内だけでなく、地域連携も欠かせません。先日、難病の方が大学病院から退院される際に、病院の医師や看護師さん、リハビリ職の方、そして地域のケアマネさんやヘルパーさんも含めて多職種での退院前カンファレンスを行いました。退院後のケアの必要性を共有し、訪問看護は1日2回、ヘルパーさんも1日4回介入する形で退院後のサポートを調整。ご自宅での療養生活を安心して継続できるように、地域の皆で退院をお迎えする準備を行い、「おうちに帰って来られてよかった。」と、患者さんとご家族の笑顔を見ることができました。
また、お看取りや終末期のケアでは、ご家族がとても悩まれ、心を砕いて過ごされる場面が多く、最期までどのように生きていくか、ということについて、専門職としてはもちろん、家族の一員のような気持ちで関わらせていただいています。病院の先生から「お家では大変だよ。」と言われながら、お試しでご自宅に帰られた90代の方に介入した際には、「これだけ手厚く看てもらえるなら、病院に戻らず自宅で過ごさせてあげたい。」というご家族の希望で、在宅療養を継続することになりました。お誕生日のお祝いを盛大に行うことができ、穏やかにご自宅で最期を迎えられました。
大切な時間を共有させていただいた経験から、これからもたくさんのお話合いを重ねて、どうしたらその方らしい過ごし方ができるか、常に患者さんやご家族と共に歩んでいけたらと思います。
「1人で訪問していても1人じゃない。」という安心感。
日々の取り組みを発信することで自らも成長していきたい。
訪問看護を始めたばかりの頃は、重症心不全患者さんなどのケアに自信がなく「1人で訪問先に行ってイレギュラーなことが起こったらどうしよう。」と不安でした。でもYUMINOでは、Teamsなどのコミュニケーションツールを活用して情報共有もスムーズに行うことができ、 すぐに医師、看護師、リハビリスタッフなどの専門職に相談できる体制が整っています。そのため、「1人で訪問していても1人じゃない。」という感覚で安心して仕事に臨むことができています。
個人的なところでは、最近、もっと看護の知見を深めたいという想いが強くなり、医学会での臨床研究発表に挑戦しています。法人内の臨床研究支援部に相談し、サポートを受け、「心不全患者さんに対する訪問看護」をテーマに、この秋に2つの発表を予定しています。訪問看護の合間に準備を続けてきたので大変なこともありましたが、日々の臨床の中から、YUMINOの取り組みを発信して、多くの患者さんに寄り添う看護が広がっていったらいいなと思っています。