【日本在宅医療連合学会大会 台湾在宅医療学会合同企画】Hospital at Home 在宅入院の実現に向けた取り組み
医療法人社団ゆみの理事長を務める弓野が、医療法人あおばクリニック院長である伊藤大樹先生と共に「第7回日本在宅医療連合学会大会」の「台湾在宅医療学会合同企画」で座長を務めました。
今回は台湾在宅医療学会の創設理事長であり、台湾で在宅医療発展に大きく貢献された都欄診所 所長の余 尚儒(ヨ ショウジュ)先生にもご参加いただき、2023年7月から公的制度として導入が開始された在宅入院についてのディスカッションが行われました。
ー【台湾在宅医療学会合同企画】Hospital at Home 在宅入院の実現に向けた取り組み
Hospital at Home(在宅入院)とは
Hospital at Home(在宅入院)は、コロナ禍を経て急速に広まった新しい医療システムです。これまでは入院で行っていた治療を自宅で提供するものであり、従来の医療提供体制とは違ったシステムとなっております。
現在、日本で広く展開されている在宅医療の90%以上は地域の診療所が主に提供している一方で、Hospital at Home(在宅入院)の場合は主に病院が提供するシステムとなっていることが特徴的です。
エビデンスに基づく有効性
Hospital at Homeに関するエビデンスも多く蓄積されており、以下のような効果が実証されています。
- 6か月後の死亡率、再入院率に有意差はない
- 施設入所率は低下
- 患者満足度は高い
- 医療費抑制に繋がる
これらのメリットにより、患者のQOLを維持しながら治療を提供することが可能な制度と言えます。
日本の在宅医療の可能性
日本においては、既に肺炎や尿路感染症の抗菌薬治療、酸素療法などの実例があり、会場からも「入院をしたとしてもベッドに空きがなく、結果的に自宅で診療せざるを得なかった経験がある。病院をラボのように活用することで在宅入院は実現可能である」という意見が挙がりました。
また、医療法人社団ゆみのが、従来は「絶対に自宅で診ることができない」と言われていたカテコラミン症例を診療報酬に結び付けた実績のように、Hospital at Homeにおいても日々のエビデンスを蓄積していくことで実現が可能であると考えています。
日本での導入課題
一方で、日本での導入に向けてはいくつかの課題も提示されました。
対象患者の決定、在宅において発生するトラブル、受け入れ基準、急性期病院との患者の奪い合いに繋がるのではないか、病院経営上の課題や新たなシステム導入コスト、アジア圏における入院文化等、今後話し合いを進めていくべき内容は多く、今後も引き続き話し合いの継続が必要となります。
台湾での実践と課題
台湾での導入経験からは、既存の在宅医療を提供している医師が、急性期治療の経験が少なく制度拡大に時間を要したことや、人材不足による医療体制の構築、スタッフの育成についてはいまだに課題が残っている現状についてお話がありました。特に急性期経験がない医師が在宅入院に対応するには心理的にもハードルが高く、今後急性期で働く医師との連携も重要視されています。
地域からの発信の重要性
座長弓野からは、Hospital at Homeは病院発信の考え方であるが、地域側からも積極的に発信していく必要がある。地域の住民や急性期病院からも信頼される医療スタッフを育成し、在宅医療のさらなる発展に繋がる体制を構築していくことが重要であるとの考えを示しました。
単なる医療技術の導入に留まらず、地域医療全体の質向上と信頼関係の構築を基盤としたHospital at Homeの発展が今後重要になります。
当法人としても、これまでの在宅医療の実践を基盤として在宅医療の更なる発展に寄与して参ります。
医療法人社団ゆみの 井梅弘毅