心臓病予防アクション:睡眠編

心臓病予防2024年10月17日

みなさんの人生の3分の1は睡眠です。心臓病予防において、「質の良い睡眠」は見逃せない重要な役割を果たしています。「質の良い睡眠」は血圧やホルモンバランス、代謝に深く関わり、心臓病リスクを大幅に低減させます。ぜひ、ご自身の睡眠と向き合っていただきたいと思います。

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まずは適切な睡眠時間についてです。7〜8時間の睡眠が最も心臓に適した時間とされ、アメリカ心臓協会(AHA)の調査によれば、短すぎる睡眠は高血圧や冠動脈疾患のリスクを増加させ、逆に長すぎる睡眠も心臓に負担をかけることがわかっています。バランスの取れた睡眠時間の確保が、心臓病予防の基本です。また、睡眠中に血圧が十分低下しないと、動脈硬化や心血管リスクが上がりやすい「ノン・ディッパー型」となり、血圧管理が難しくなるのです。

睡眠不足はストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンを増加させ、血圧や心拍数の上昇を引き起こします。こうしたホルモンバランスの乱れが慢性化すると、動脈硬化の進行を助長し、心臓病の発症リスクが高まります。さらに、不十分な睡眠は体内の炎症性サイトカインの増加により炎症を引き起こし、慢性的な炎症が動脈硬化を進行させる要因となります。米国の臨床研究では、睡眠不足がC反応性タンパク(CRP)の増加と関連するとの報告があり、これは心臓病リスクのとても重要な指標です。

代謝機能との関連です。睡眠は血糖値の安定やインスリン感受性の維持に不可欠です。睡眠不足が続くと、インスリン抵抗性が高まり糖尿病リスクが増加し、ひいては心血管疾患リスクも上昇することが、様々な臨床研究で確認されています。良質な睡眠はまた、精神的ストレスを和らげる重要な役割を果たし、"心の健康"を守るためにも欠かせません。慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、心拍数や血圧を上昇させることから、睡眠を確保することが心臓病予防の一環としても推奨されるのです。

加えて、日本人に多く見られる睡眠時無呼吸症候群(SAS)も見逃せません。日本人は体型が比較的スリムでありながら、SASの発症率が高く、これは骨格や気道の形状によるものとされています。SASは高血圧、心房細動、心筋梗塞のリスクを上げるため、特に日本人には早期の発見と治療が推奨されます。SASの代表的な症状として「いびき」が挙げられます。いびきは気道が狭くなっているサインであり、特に途中で息が止まるようないびきをかく場合はSASの可能性が考えられます。日本人は自覚しづらいケースも多いため、家族やパートナーに指摘された場合は早めに医師に相談することが推奨されます。

睡眠は心臓や血管にとって、休息と回復の大切な時間です。心臓病予防の一環として質の良い睡眠を意識し、生活習慣の改善に役立てましょう。

 

医療法人社団ゆみの
循環器予防医療部 部長

土肥 智貴 

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