心臓病を「予防する」とは?
「予防」は「あらかじめ(予め)防ぐこと」を意味します。医療の領域では、病気の「発症を予防」することから「再発を予防」「進展を遅らせる」ことでも用いられます。
私はこれまで心臓病や血管病の患者さんの診療に取り組んできました。それらを通じて強く感じたことが、予防することの大切さです。ここで伝えたいことは、心臓病で治療を受けた患者さんの多くは、それまでの生活での「ちょっとした行動」を「あらかじめ」整えていたら、発症が防げていた可能性が十分にあったことです。また、発症してしまったが、その後、適切な予防行動を行うことで再発を防ぎ、発症前より元気に過ごすことも可能だということです。
例えば、生活習慣病は日本人の死因の上位を占める心臓病、脳血管疾患、がんの原因となることが知られています。生活習慣病の段階で適切に対応すれば、これらの重篤な病気を予防できます。つまり、日常生活における適切な予防行動を行うことで、心臓病や脳血管疾患の予防だけでなく、がんの予防や健康寿命の延伸も可能になります。また、病気を発症した患者さんにおいても、その後の適切な予防行動により、社会復帰して発症前より健康意識が高まり、より充実した生活を送る方々が数多くいらっしゃいます。つまり、どの段階でも予防の重要性を理解して、行動を始めることは健康な人生に繋がるということです。
では予防行動とはどのようなものでしょうか。その大部分は日常生活における習慣や行動が占めます。適切な薬物治療も重要ですが、皆さんの日常生活での小さな選択や努力の積み重ねが最も重要な予防行動なのです。米国心臓学会が提唱した心臓や血管の健康を促進する行動として「エッセンシャル8」の提案があります。
それは ●禁煙 ●運動・身体活動 ●健康的な食事 ●適正体重 ●血糖コントロール
●コレステロールの管理 ●血圧の管理 ●睡眠の改善 という8項目で構成されています。
これらの生活習慣を一定水準以上に維持することで、心臓病発症リスクを80%以上減らせる可能性が示されています。私は、これらの健康行動や健康要因の重要性についての認知や理解を広げていくこと、どのように予防行動を実践すべきかを伝えることが、「より健康な地域社会」につながると考えています。
こちらの「心臓病予防コラム」では、心臓病を予防するためのポイントや、心臓病の発症メカニズムなどを通じての予防行動の重要性を解説していけたらと思います。
医療法人社団ゆみの
循環器予防医療部 部長
土肥 智貴
参考文献:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001078