重症心不全患者への在宅静注強心薬持続投与指針が発表になりました
YUMINO創立11年、地域心不全医療への私たちの想いがひとつの形になりました。
研修医時代に同世代の重度の心不全患者さんたちが静注強心薬持続投与が必要となり、長期入院のなかで 「家に帰りたい」 その訴えをなんとか叶えてあげたいと考えました。その後、心不全の管理を国内大学病院・海外留学にて臨床、研究に従事し、2012年にゆみのハートクリニックを開設しました。
少しずつ同じ志を持つ素晴らしいスタッフが集まってきました。2024年3月現在、東京、大阪、福岡を含む7拠点にて、循環器疾患の外来及び在宅診療を提供する診療所を運営し、在宅管理を必要とする心不全患者数も年間1500名を超え、子どもから高齢者まで、多くの難治性の症例に対応してきました。
そのなかで、在宅での静注強心薬持続投与を必要とする患者さんの受け入れも行ってきました。 まだ診療報酬の承認がないなかでも、これからの心不全医療の発展のため、一人ひとりの患者さんとその家族、病院の想いに応えたいと、みんなで考えて対応してきました。 適正な医療を逸脱することなく、安全性を重視しながら、医師、看護師、ソーシャルワーカー、リハビリ、事務スタッフで話し合い、院内マニュアルを作成・改訂し、全国の専門病院からの問い合わせに情報を共有してきました。そして、病院で通常行っている医療を在宅医療においても行えるよう、関連学会と共に厚生労働省へ要望書を提出してきました。
そして、2024年診療報酬改定において、在宅静注強心薬持続投与が新設として保険承認を得ることができました。これと同時に心不全患者への緩和ケアとして、在宅でのオピオイド静注も新設、また別表8には十数年ぶりにこれらの項目が加わりました。これにより、本邦における在宅での心不全治療ケアの幅が大きく広がることになります。
これらの保険診療承認に先立ち、2024年3月25日付けで日本心不全学会、日本在宅医療連合学会から『重症心不全患者への在在宅静注強心薬持続投与指針』が発出されました。
当法人からも指針作成メンバーとして肥後太基渋谷院院長、伊東紀揮統括看護部長、齋藤慶子ソーシャルワーカー室長が参加し、また日本心不全学会絹川弘一郎理事長や大阪大学循環器内科坂田泰史教授など長年重症心不全治療に関わる先生方および医療スタッフが集まり作成いたしました。
本指針では、対象患者として、難治性心不全(ステージD)患者、介護者が存在すること、また病院での強心薬持続投与を導入、中心静脈を介した輸液ポンプ管理を必要とすることを明記しています。 また、医療機関の要件として、在宅医療を提供する機関では、循環器系関連専門医を要することなど、多くの制約があります。 しかしながら、本指針により、まずは在宅での静注強心薬療法が可能となり、これからの道筋をつけることができました。
今後の課題として、
・本指針第一版においては、まずは安全性を担保するという目的で、在宅医療機関の要件としては常勤の循環器系学会の専門医の在籍が必要となったが、今後は人的資源が限られた専門医が少ない地域においても使用を可能にするために、管理方法の確立、安全性のエビデンスの構築を行っていく 。
・今回の保険診療改定において、在宅で使用可能な静注強心薬がドブタミン、ドパミン、ノルアドレナリンのみに限定されており、 PDE-3阻害薬が対象から外れているため、同薬の承認を検討していただくことがあげられます。
最後に、これから医療の発展に伴い、心不全患者がsalvageされ、より医療依存度の高い重症心不全患者が増えていくでしょう。 本指針が作成され、より多くの心不全患者さんとそのご家族の生活の質の向上につながることを願い、YUMINOとしてもさらに心不全医療の発展に寄与できるよう進んでいきます。
関連資料
1)日本心不全学会ホームページ内 在宅静注強心薬持続投与指針 https://www.asas.or.jp/jhfs/topics/20240326.html
2)令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf
医療法人社団ゆみの
弓野 大