Clinical Question:せん妄の診たてと薬物療法
せん妄マネジメントの基本は、①せん妄の原因の解除に努める、②非薬物療法的介入(環境改善)を十分におこなう、その上で③薬物療法がおこなわれる。
低活動型せん妄に推奨される薬剤はなく、過活動型せん妄が薬物療法の対象となる。
せん妄薬物療法の第一選択は、抗精神病薬である。図は『日本総合病院精神医学会せん妄の臨床指針第2版』によるせん妄に対する薬物療法アルゴリズムである。
まず投与経路として、内服が難しい場合はハロペリドール点滴が選択される。
内服可能な場合は、錐体外路系副作用が少ないという理由から、多元受容体作用を持つ非定型抗精神病薬であるクエチアピン、オランザピンが推奨される。
ただし、これらは日本において糖尿病の既往があると禁忌であるため、糖尿病がある場合には、ペロスピロン、リスペリドンが使用される。
リスペリドンは腎排泄であるため、腎機能が低下している場合には使いにくい。
半減期が短く高齢者にも使いやすいという点では、クエチアピン、ペロスピロンは有利である。オランザピンやリスペリドンは口腔内崩壊錠や内用液があり、剤形の利がある。
せん妄に抗精神病薬を用いる場合、必要最小量を初期設定する。
効果不十分な場合には、同量~倍量を不穏時追加として繰り返し、翌日の投与量はそれを参考に決定する。せん妄が落ち着けば、ただちに漸減中止するのが原則である。
近年、せん妄の予防となる睡眠薬の可能性が注目されており、メラトニン受容体作動薬であるラメルテオンや、オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントには、ICUまたは急性期病棟に入院した高齢者において、有意なせん妄予防効果があったという報告がでている。
ゆみのハートクリニック
赤穂 理絵