Clinical Question:爪白癬
爪白癬とは
皮膚糸状菌に分類されるTrichophyton rubrumやTrichophyton mentagrophytesを主な原因菌とする爪の感染症であり、爪の混濁、肥厚、変形、落屑といった外見上の変化のみならず、爪の肥厚に伴い靴を履く時の痛みや歩行困難等が出現するなど、患者には肉体的・精神的な負担がかかる。また、治療せず放置することで、家族内感染等周囲への感染の拡大を招いてしまうことも問題点となっている。
本邦における 足白癬は人口の約 21.6%、爪白癬は 10.0%の頻度と推計されている。
鑑別
爪変形には爪真菌症のほか、掌蹠膿疱症、尋常性乾癬、扁平苔癬、厚硬爪甲、爪下腫瘍など多くの疾患があり、確定診断のために真菌検査を行う。
治療
外用薬は経口抗真菌薬に比べ完全治癒率は低いものの、抗真菌薬の内服ができない(肝機能異常、併用薬)、あるいは内服を希望しない爪白癬患者に使用される。
(日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019)
●内服
- ラミシール(テルビナフィン)125 mg/日の 6 カ月連続の内服療法が行われる。
副作用:肝障害、汎血球減少、無顆粒球症、血小板減少、消化器症状。定期的な血液検査が必要。
併用注意薬として(シメチジン、リフアンピシン、EPホルモン剤、三環系抗うつ剤、シクロスポリン)などがあるが、イトラコナゾールと比べると少ない。
有効率:84.4%
- イトリゾール(イトラコナゾール)400 mg/ 日、3サイクルのパルス療法(1週間投与後3週間休薬)
副作用:肝機能異常、消化器症状。定期的な肝機能検査が必要。
多数の禁忌薬、併用注意薬あり(強いCYP3A4阻害作用のため)(禁忌薬:べプリジル、アゼルニジピン、セララ、コララン、プラザキサ、イグザレルド、アデムパス、アドシルカetc)。
有効率:84.6%
※後発品の品質について、必ずしも先発品と同等とは言えないという報告がある。
- ネイリン(ホスラブコナゾール100mg) 1日1回1カプセル。12週間経口投与 食事に関係なく服用可能。
副作用:肝機能異常、消化器症状。投与中の血液検査は義務付けられてはいないが、肝機能障害を生じることがあるので血液検査を行うことが望ましい。
併用注意薬:シンバスタチン、ミタゾラム、ワーファリン。
治癒率:59.4% 有効率94.4%
●外用薬
- クレナフィン(エフィコナゾール) 1日1回、罹患した爪に塗布。
適応:直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者
副作用:接触性皮膚炎、水疱。
完全治癒率:17.8%。
- ルコナック(ルリコナゾール)1日1回、罹患した爪に塗布。
適応:直接鏡検又は培養等に基づき爪白癬であると確定診断された患者
副作用:皮膚乾燥、接触性皮膚炎、湿疹。
治癒率:14.9%。
ゆみのハートクリニック
四倉玲