Clinical Question:ICD deactivation
- 心疾患において突然死予防に関して植え込み型除細動器(ICDまたはCRTD)の有効性は確立しています。
- 一方で除細動機能が作動する時の電気ショックは、精神的負荷やPTSD様の心因反応にいたることが報告されています。とくに治療抵抗性の慢性心不全終末期においてその除細動機能を維持するか停止するかは高度なACPに立脚する倫理的な問題も含むため、対応が難しい場面に遭遇することもあります。
- 本邦の報告では ICDまたはCRTDを使用している末期心不全51例の調査ではDNARを確認した39例のうち実際にICDの除細動機能を停止した例は12例(24%)に過ぎなかったと報告しています(図1)。(スウェーデンの同様の調査では約50%)除細動機能の理由としては(1)疼痛の回避(2)不安の軽減(3)家族が見ることに耐えられないなどの理由が挙げられています。また、除細動機能停止の議論の始まりは(1)医師から(2)患者本人(3)家族となっていますが、多くは医療者からであったことも報告されています。
- 日本循環器学会の『循環器疾患における緩和ケアについての提言』ではこのような終末期患者におけるICDの除細動機能停止決定へのプロセスをまとめています(図2)。多職種による確認事項を共有し患者本人の意思確認ができるか否か、できない場合の意思決定代理人との対話など、最善の方法をチームで慎重に選択することを提案しています。
- この除細動機能停止の議論は、今後増加する高齢者心不全への対応として知っておくべき大切な議論であると考えられます。
ゆみのハートクリニック三鷹
鈴木豪