日中の眠気を主訴に来院、簡易検査で軽症、PSGで重症だった症例

2025年01月17日

症例

50歳台 性 身長:170㎝ 体重:64 kg BMI:22.1 ESS:16 日中過眠を主訴に来院、いびきや無呼吸も指摘されたとのことで簡易検査を施行、REI=8.4回/時間の結果で今回診断PSGを行ったところ、AHI=36.7回/時間と重症の結果となりました。

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上のトレンドグラフからは体位依存性がかなり明瞭ですが、朝方の右側臥位だけは呼吸イベントが抑制されていません。もしかするとfluid shift(日中下半身に貯留していた体液が、夜間、臥位となることで頭部や首周囲へ移動する現象)による上気道周囲のむくみなどが関係しているのかもしれません。またレム睡眠時のdesaturationはノンレム睡眠より軽度で、典型的なOSAとは異なる印象でした。 

 

ここで簡易検査結果との違いを考察してみたいと思います。 

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PSGで重症化した1番目の要因は、この症例のBMIが低値であることだと思われます。やせ形の症例は呼吸イベントが生じてもdesaturationが生じにくく、3%まで低下しないため、簡易検査では呼吸イベントと判定できません。実際に簡易検査を判定した技師は、desaturation2%の呼吸イベントが多数あったとコメントしていました。PSGでは覚醒反応があれば呼吸イベントと判定できます。それならなぜPSGの3%ODIが簡易検査の3%ODIより4倍も高かったのでしょうか?おそらく簡易検査では、酸素飽和度測定の移動平均時間がPSGと異なることやアーチファクト除去機能が関与しており、ODIを判定するアルゴリズムそのものがPSGとは異なるためと思われます。 

2番目の要因は、仰臥位時間の差だと思われます。PSGでは簡易検査の3倍の長さで仰臥位になっています。ただ仰臥位時間内のみのAHIでも簡易検査よりPSGのほうがはるかに高値でした。この結果からSpO2の測定誤差と体位が複合して影響した結果、このような大きな乖離が生じたと考えられます。 

参考まで睡眠効率も簡易検査とPSG乖離の要因となりますが、この症例のPSG睡眠効率は98.6%と高く、問題ありません。高齢者など睡眠効率の低い症例ほど、簡易検査結果が過小評価となる可能性が高いといえます。 



ゆみのハートクリニック 川名 ふさ江

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