覚醒時の呼吸イベントや覚醒反応の判定に生じる問題点
ゆみのPSGケースカンファは、毎週金曜日に法人各拠点をオンラインでつなぎ、川名ふさ江睡眠検査統括を中心に、医師、 臨床検査技師(うち日本睡眠学会専門検査技師5名)で一週間の全ての終夜睡眠ポリグラフ検査の振り返りを行い、今後の方針を決めていきます。 こちらにはその週の代表的な症例を公開し、川名統括による症例コメントを記していきます。
症例
60歳台男性 身長:170cm 体重:82Kg BMI:28.4 ESS:6と眠気の自覚症状は強くないのですが、入眠困難で眠剤を2種類服用中、家族にいびきと呼吸停止を指摘され受診
簡易検査ではREI=31.2 当院診断PSGでAHI=29.6回/時間と中等症の SASと診断されました。簡易検査よりAHIが減少したことには理由があります。
入眠直後の波形です。脳波上は覚醒と判定されるエポックが続いていますが、このように閉塞性低呼吸がdesaturationを伴って生じています。しかしレポートには、これらの呼吸イベントは反映されていません。さらに脳波の周波数変化と心拍数の上昇の見られた部分にあえて覚醒反応を判定してみましたが、これらの覚醒反応も、レポートには反映されていません。AASMスコアリングマニュアルVer.3では図を追加して、たとえ覚醒と判定されたエポックが続いている中でも10秒以上の睡眠を認めれば覚醒反応を判定すべきで、それらはTSTを基準としてレポートに記載することを再認識させています。青矢印のエポックの脳波を次に示します。
前の波形の最初の呼吸イベントが生じたエポックの脳波波形です。SEMは認めていますがα波がまだしっかりと出現しており、脳波上は覚醒ですが閉塞性低呼吸が出現、desaturationも生じ始めていることがわかります。
本症例が簡易検査時のREIよりPSGのAHIが減少した理由は、簡易検査では覚醒時のイベントも呼吸イベントとしてREIに含まれ、たとえ基準が記録時間であっても、それを補えるほど覚醒時のイベントが多かったことになります。
ゆみのハートクリニック 川名 ふさ江