CPAPタイトレーションで治療効果を確認できなかった症例
症例
40歳台女性 身長:163㎝ 体重:82Kg BMI:30.9 2023年にいびきと無呼吸、熟眠感の欠如、足のムズムズ感を主訴に来院、10か月で8㎏の体重増加、統合失調症あり。診断時のトレンドグラフです。
<診断時のトレンドグラフ>
睡眠時に低呼吸イベントが多数判定され、中等症OSA(AHI=24.2回/時間)と診断されました。PLM指数は9.3回/時間でした。
<診断時の呼吸イベント波形>
診断時の朝方、深睡眠時に判定された閉塞性低呼吸イベントです。覚醒反応を伴わず、SpO2の変化はなだらかで、3%以上のSpO2低下を伴うときのみ閉塞性低呼吸と判定されています。しかしこれらの気流振幅の変化は、ループゲインの亢進の結果として生じた不安定呼吸に、肥満からdesaturationが生じやすいことで呼吸イベントと判定された可能性があります。
<タイトレーション時のトレンドグラフ>
中等症のSAS診断にてCPAPを導入するも自宅で使用できず、CPAP装着指導も兼ねて、タイトレーションを行いました。残存する呼吸イベントは24.2回/時間と治療効果は確認できませんでした。1時20分頃から中途覚醒が続き、総睡眠時間が短くなったことで、AHIがより高値となった可能性があります。CPAP圧が5㎝H2Oでは閉塞性、6㎝H2Oでは中枢性無呼吸が認められました。呼吸イベントは10秒というわずかな時間で出現しても、90%までSpO2値が低下しています。そして深睡眠に入るとSpO2値は低下したままの90%で推移しています。後半は中途覚醒が多く、苦しいとの訴えが続き、CPAP圧は4㎝H2Oのまま上げることができませんでした。ただ4㎝H2Oでも呼吸イベントは出現せず、SpO2値は91%前後のまま、安定した睡眠が記録された時間帯もありました。CPAPに対する抵抗や恐怖感があるようで、4㎝H2Oのまま使っていただくか、中止も考慮に入れたほうが良いかもしれません。今回PLMは記録されませんでした。ただPLMを合併しないRLSもあるので、PSGでのRLS診断は確実なものではありません。
ゆみのハートクリニック 川名 ふさ江