Clinical Question:腫瘍循環器学
〇診療アルゴリズム
- がん治療前:循環器リスク評価は全ての患者に対して強く推奨されている。
がん治療開始前にリスク因子或いは症候性及び無症候性の心血管疾患既往を見極めることは、適宜循環器医に相談或いは併診するための第一歩となる。 - がん治療中:患者関連・がん関連・がん治療関連の各要因に対し、患者毎の循環器管理が必要となる。
治療前リスクが中~高度の場合、非侵襲的な画像診断やバイオマーカーによるモニタリング、及び心血管疾患標準治療に準じた二次予防・一次予防が試みられる。 - がん治療終了後:終了直後及び1年後に心機能を評価し、その後は各要因に応じて適切な間隔でフォローする。
〇がん治療関連心筋障害
- 特にがん治療に伴う心筋障害と心不全は、がん治療関連心筋障害(CTRCD:cancer therapeutics-related cardiac dysfunction)と表現される。
- CTRCDは「がん治療中に心不全症状の有無にかかわらず、左室駆出率がベースライン値よりも10%以上低下し且つ施設基準下限値を下回る状態」と定義される(日本のガイドライン上では50%)。
- CTRCD発症時は当該治療薬の中止並びに心血管毒性の低い代替治療薬への変更を検討すること、及び心保護薬を開始する。
- 主にアントラサイクリン系薬剤や抗HER2抗体薬で問題になるが、最近ではチロシンキナーゼ阻害薬やプロテアソーム阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬においても発症が報告されている。
のぞみハートクリニック
福島 貴嗣