Clinical Question:在宅高齢心不全患者のせん妄について考える
- 高齢心不全患者は、その経過中にしばしばせん妄を合併する
- せん妄はしばしば医療者から過小評価されており、その診断・治療が遅れることにより、より病態が複雑化し、ケアの質の低下やケアの複雑化につながる
- せん妄の原因に対処するとともに、必要時に抗精神病薬を中心に薬物導入する
- 抗精神病薬導入後もせん妄が落ち着かない場合、家族の「コミュニケーションを取りたい」、「休んでほしい」という気持ちや予後と相談しながら、夜間のみの間欠的もしくは持続的鎮静も選択肢にする
- せん妄治療のベースは抗精神病薬ではあるものの、鎮静を行う場合、決め手となる薬剤としてはベンゾジアゼピン系も選択肢にする
- ただし、ベンゾジアゼピン系薬はせん妄を悪化させることもあり、使用には十分な注意を要する
- せん妄に対する薬物治療はエビデンスが乏しい(特に在宅場面において) 今後のエビデンス構築が必要
せん妄に対する薬物療法
■ 抗精神病薬について
- 第一選択は抗精神病薬であるが、いずれも日本でせん妄に対して保険適応は有していない
- しかし、2011年に厚生労働省がクエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンの4剤について、せん妄に対して、適応外使用を認めている
■ その他の薬剤
- 抑肝散: 認知症患者におけるせん妄を含む行動・心理症状に対して有効性・安全性メタ解析で証明あり
- BZD系薬剤はせん妄の原因となるため、原則使用は回避が望ましい(が、実臨床ではしばしば使用される
- せん妄予防効果: メラトニン受容体アゴニストのラメルテオン、オレキシン受容体拮抗薬のスポレキサント
嶋村 邦宏
参考文献
- せん妄の臨床指針 (日本総合病院精神医学会せん妄指針改定班編, 2015)より引用、改変