Clinical Question:Non-steroidal MRA(Finerenone)への期待
2021年7月、女性化乳房等性腺への副作用が少ない、ステロイド骨格を持たないミネラルコルチコイド受容体拮抗薬non-Steroidal MRA、Finerenone (フィネレノン)がFDAで承認されました(日本では未承認)。
第2相試験であるARTS-HF試験では標準的な心不全治療を受けているHFrEFの患者に対するエプレレノンとの比較試験において、Finerenone群の3ヶ月後のNTproBNP減少効果はエプレレノン群と同等、血清カリウム値の上昇はエプレレノン群より少ないという結果でした。
さらに腎障害(Ccr<30)や、アルブミン尿を伴う糖尿病患者を対象とした第3相試験(FIDERIO-DKD)では、プラセボ群と比しeGFRの低下を抑制し、心血管合併症の頻度低下が示されました(表1)。
Finerenoneは既存のMRA(スピロノラクトン、エプレレノン)が腎臓に多く分布するのに対し、心臓と腎臓に同等に分布する特徴があり、MR受容体への選択性、親和性が高く、結合時間が短いとされています。腎臓での利尿・降圧効果は限定的のようですが、カリウム上昇の副作用は少なく、一方で、多臓器での抗炎症・抗線維化作用は高く、心血管疾患への予防効果が期待されます。
日本ではまだ未承認ですが、高Kの副作用の低減と臓器保護作用の観点から、臨床での有効性に期待したい薬剤です。
ゆみのハートクリニック
吉本明子
<参考文献>
Eur Heart J 2016;37:2105--2114.
N Engl J Med. 2020; 383: 2219-2229.