Clinical Question:薬剤関連性顎骨壊死
1. 薬剤関連顎骨壊死は骨吸収抑制薬関連のものと血管新生阻害薬関連のものを包含する概念で、8週間以上持続して口腔や顎に骨露出を認める病態を指します。抜歯などの骨へ侵襲を及ぼす外科処置、不適合義歯・過大な咬合力、口腔内不衛生などが局所リスク因子と言われ、年齢があがるほど起きやすくなります。
2. メカニズムは完全には解明されていませんが、薬剤の作用である骨代謝回転抑制作用、血管新生抑制作用に加え、口腔粘膜のリモデリング抑制と免疫抑制作用などが影響し創傷治癒が遅延することによると考えられています。
3. 対応の基本的なスタンスとしては、上記の薬剤を使用する際には①開始前に歯科受診をすること(予防的歯科治療で発症リスクを33-50%低下できます)、②その後も口腔内健康管理を定期的におこなうこと、③ステージがあがると治療に難渋するため早期発見・早期治療を行うこと、があげられます。
4. 抜歯などの治療介入時の考え方としては、薬剤の投与開始のタイミングは、抜歯後、少なくとも上皮化(14-21日)後、時間的猶予があれば骨性治癒(2-3か月)後が望ましいとされます。癌治療などで薬剤開始に緊急性がある場合には、抜歯はせずに保存的加療を行うことも考慮されます。既に投与している時の中止期間は、ビスホスホネート製剤は2か月以上の中止が望ましく、デノスマブは半年ごとの薬剤であり血中半減期が約1か月であることから、中止はせずに、次の投与までの期間を考慮し治療時期を検討することで対応するとよいでしょう。
ゆみのハートクリニック渋谷
山上文