Clinical Question:いざという時のために知っておくべき『成年後見制度』について
法務省HPより引用
- 成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害,発達障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方について、本人の権利を守る支援者(「成年後見人」等)を選ぶことで、法律的に支援する制度
- この制度には、任意後見制度と法定後見制度がある
- 成年後見人が医療行為の意思決定者になることはできないため、多職種で検討する
普段、クリニックでの外来診察や在宅訪問診療を行っていると、
- 独居、配偶者・子供なし
→最近、認知機能低下が進行してきている・・・
- 本人、認知症あり
→配偶者はすでに亡くなられている。
一人娘(or 一人息子)が本人の主たる介護者となっている。
その状況で娘(or 息子)が末期癌に罹患・・・
- 独居、配偶者・子供なし
→姪(or 甥)が時折支援
しかし、多忙で介護支援は期待できない・・・
などの背景の方を診察することがあります。
このような社会的背景がある場合、成年後見制度の利用を検討することになります。任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに,判断能力が低下した場合には,あらかじめ本人自らが選んだ人(任意後見人)に,代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。一方、法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後,家庭裁判所によって,成年後見人等が選ばれる制度です。本人の判断能力に応じて,「補助」「保佐」「後見」の3つの制度が用意されています。
成年後見人等は、本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて、家庭裁判所が選任することになります。本人の親族以外にも、法律・福祉の専門家、その他の第三者や福祉関係の公益法人、その他の法人が選ばれる場合があります。成年後見人が選任された後ですが、財産権の行使である医療契約(受診、入院など)の締結・解除とその費用の支払いに関しては、成年後見人の包括的代理権に含まれますが、検査、投薬、手術、人工呼吸器装着、予防接種、など身体に侵襲を伴う医療行為に関して本人に代わって同意する権限は認められていません。それ故、医療現場におけるさまざまな意思決定について親族がいない場合、仮に成年後見人から同意を得たとしても法律的には全く根拠がないということになります。そのため、検査・治療方針などについて後見人は医療方針の決定者になることはできません。本人に関わっている医療者・介護者など多職種でその都度相談して決めていくことになります。
のぞみハートクリニック
岡田健一郎