心不全患者への訪問看護の有用性
今回は、循環器専門の看護師が退院後7−14日以内に訪問し、多職種介入も行いフォローアップした場合(nurse-led, multidisciplinary, home-based intervention:HBI)と、通常通りのフォローアップのみをした場合の比較をした研究についてご紹介します。
1226人の心不全患者について、1400日ほどのフォローアップをおこなっています。その結果、循環器専門看護師による退院後7-14日以内の早期の在宅への訪問、その後の在宅での多職種介入を加えた方が、標準的な通常通りのフォローアップよりも、生命予後が有意に長く、また死亡率自体も少ないという結果でした。また入院に関してみると、在宅への多職種介入群は、心血管入院の回数が少なく、予定外入院、全入院の入院期間が有意に短いという結果でした。これは、重症化入院を避けることができ、在院日数を少なくできているとと考えられ、心不全患者さんのQOL向上につながると考えます。心不全患者さんの疾患管理をしていくうえで退院後の在宅での支援の重要さがわかります。
次に、年齢層に区分した解析を行っています。心不全患者において60歳から82歳の対象で、在宅への多職種介入の有用性が明らかでした。若くて合併症の少ない患者では、在宅介入を行わずに、通常通りのフォローアップで問題ないと考えられますが、若くても心不全で仕事が続けられなくなってしまったり、家族関係が希薄だったりするような患者さんにしぼると在宅介入の効果はあると考えます。また、逆に82歳以上の高齢者では、在宅介入の効果が明らかでなかったという結果について、この研究報告からははっきりしたことは言えません。しかしながら、高齢者心不全自体の予後が不良であること、そして患者本人だけはなく、介護者である家族や社会的支援も考慮にいれなくてはならないのかもしれません。
この報告から、心不全患者の退院後の在宅への早期の看護師訪問が再入院を抑え、そして在宅への多職種介入の予後改善効果を示しました。これらの結果は、通院困難な高齢者心不全の在宅医療を行っている当院において、組織としての社会的使命を感じるとともに、心不全患者の再入院を抑え、生活の質をいかに維持そして向上するために、わたしたちは更に何を行うべきかを考えさせられる報告でした。
参考文献
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Stewart S, et al. Circulation 2016; 133: 1867-77.
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