Clinical Question:『転んで手をついた』FOOSHへの在宅での初期対応

YUMINO education program2026年04月23日

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■ 年末年始に相次いだ手の骨折 

「FOOSH(Fell on Outstretched Hand)」とは転んで手をついた状況を指す整形外科の用語です。年末年始に担当患者さんが相次いで転倒し、2名が手の骨折を負いました。往診で対応しながら悩んだことが、このテーマを勉強するきっかけになりました。 

高齢者の四大骨折は、脊椎圧迫骨折・大腿骨近位部骨折・橈骨遠位端骨折・上腕骨近位部骨折です。このうちFOOSHで受傷しやすいのが後半の2つです。高齢者の場合、自転車からの転落など高エネルギー外傷ではなく、立って歩いて転ぶ低エネルギー外傷が多く、骨粗鬆症を背景として骨折が起きます。 


■ 症例① 橈骨遠位端骨折を疑った89歳女性
 

89歳女性、慢性心不全ステージD、腰椎圧迫骨折の既往のある骨粗鬆症の方です。夜間トイレに行く際に椅子に座り損ねて転落し、右手をつきました。当日は布団に戻って眠りましたが、翌日、母指の付け根から前腕にかけての皮下出血と腫脹がありました。尻もちもついており腰痛も悪化していたため、受診には行けないとのことで、往診依頼となりました。 

圧痛点は手のひら側の橈骨遠位部と母指付け根の2箇所で、受傷機転と合わせて橈骨遠位端骨折(Colles骨折)を疑いました。コレス骨折は手のひらをついた際に最も起きやすい骨折で、橈骨遠位端の骨片が手背側に転位することで外観上「フォーク状変形」がみられます。母指付け根にも圧痛がある場合は、橈骨茎状突起骨折の合併も念頭に置きながら診療を行う必要があります。 

FOOSHで見逃してはならない骨折として舟状骨骨折があります。若者の高エネルギー外傷でおこることが多いですが、血行の乏しい骨であり、骨癒合不全から骨壊死・変形性手関節症へ進展するリスクがあります。スナフボックス部位の圧痛や、舟状骨結節部位の圧痛、母指を手根側に長軸方向に押した際の疼痛があれば積極的に疑います。 


■ 
往診でまず行うこと--緊急性の評価と初期固定 

まず緊急性を評価します。開放骨折でないか、転位が大きくないか、脱臼を伴っていないか、神経・血流障害がないかを確認します。橈骨遠位端骨折では手掌側に転位した骨片が正中神経を障害しやすいため、神経障害サインの確認が必要です。 

コンパートメント症候群にも注意が必要です。初期症状は「骨折の外見に不釣り合いなほど強い痛み」や「指を他動的に伸展した際の前腕掌側の疼痛(受動伸展痛)」として現れます。この徴候を認めたらドレッシング材や包帯をすぐに外し、挙上はせずに搬送します。5Pと呼ばれる、Pain(疼痛)、Pallor(蒼白)、Paresthesia(知覚異常)、Paralysis(麻痺)、Pulselessness(脈拍喪失)が揃う段階では重篤な状態となるため、早期対応が必要です。 

緊急性がなければ初期固定を行います。骨折固定の基本は二関節固定で、橈骨遠位端骨折であれば手関節と肘を固定します。在宅では段ボールや雑誌が添え木として使えます。RICEのうち圧迫はコンパートメント症候群のリスクから省略し、安静・冷却・挙上を行います。鎮痛薬を処方したうえで、後日レントゲンで診断を確定してから整形外科で正式な固定を行います。転位が小さく安定している骨折であれば、市販の固定装具(Amazonでも入手可能)に切り替えて在宅で保存的に管理することも選択肢の一つです。 
Colles骨折は、高齢者の場合保存的加療で経過を見ることが多いですが、活動度が高く、手をよく使う、利き手、独居のため早期の両上肢使用が必要になるケースでは、手術が適応となることもあります。 

■ 症例② 神経難病患者の上腕骨近位部骨折 

2例目は神経難病を患い全介助の患者さんです。ポータブルトイレへ介助で移乗中にベッドに手をついた状態で転落し、左肩の腫脹と疼痛が生じました。年末でもあり自宅療養を希望され、往診で対応しました。皮下出血と圧痛の所見から上腕骨近位部骨折を疑い鎮痛薬と安静で過ごし、後日受診してレントゲンを撮影し、上腕骨近位部骨折と診断されました。 

上腕骨近位部骨折は血行が豊富な部位のため骨癒合が起きやすく、保存的加療でも機能的な問題が残りにくいとされています。三角巾での固定が一般的です。受傷後1〜2週間から振り子運動(コッドマン体操)で肩関節の拘縮予防をおこないます。

 

■ おわりに 

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整形外科医でない私たちが往診で骨折対応をする際に大切なのは、まず緊急性を正しく判断することです。開放骨折・転位(変形)が大きい骨折・コンパートメント症候群の兆候・神経血管障害のサインがある場合は、ためらわずに搬送の判断をすることが前提です。緊急性が高くない場合でも、転位の予防と鎮痛のための仮固定を行い、近日中には整形外科へ受診し、レントゲンで骨折部位を確認し、適切な固定具で固定することを勧めます。受診困難や受診を希望されない場合には、鎮痛と機能維持を目標に固定と、拘縮予防のリハビリテーションを検討します。 


ゆみのハートクリニック 医師
吉本 明子

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