Dr ゆみのWeekly Journal Scan 2025 総評
2012年ゆみの開設以来、毎週金曜日に理事長弓野が海外の最新医学研究報告を約30報、法人内外にWeekly Journal Scanと題して配信しています。
当法人は、最新エビデンスを単なる知識として終わらせるのではなく、日常診療・予防医療・在宅医療にどう還元できるかを常に意識して共有しています。
本記事では、2025年に配信したWeekly Journal Scanを振り返り、その特徴と医学研究の潮流を総括します。2025年も、循環器領域・予防医療を中心に多くの重要な研究が発表されました。
今年の特徴は、疾患単位の議論から、「病態横断」「時間軸」「生活背景」へと視点が明確に移行したことです。テクノロジー、肥満、環境、加齢、そして患者中心医療が相互に結びつき、「循環器医療の再定義」が進んだ一年でした。
以下、2025年を象徴する分野を整理し、総評します。
■肥満・代謝異常
2025年、最もインパクトが大きかったのはこの分野です。
肥満は単なるリスク因子ではなく、心不全・高血圧・不整脈・睡眠障害を規定する基盤病態として再定義されました。
GLP-1受容体作動薬やデュアルアゴニストは、体重減少にとどまらず、HFpEF、血圧、炎症、運動耐容能にまで影響を及ぼし、「循環器治療=血管・心筋」から「循環器治療=代謝調整」へと視野を広げています。一方で、薬物単独ではなく、食事・筋量維持・身体活動を含めた包括的介入が不可欠であることも明確になりました。
- 肥満治療薬による心血管イベント抑制効果 from NEJM
- HFpEFを合併した肥満患者への体重減少介入 from Lancet
- 食事パターンと筋量維持が心血管リスクに与える影響 from JAMA
- 肥満が心不全表現型に与える影響について from JACC
■心不全
2025年の心不全研究は、「急性期」「イベント」ではなく、入院前・退院後・在宅までを含めた連続した病態管理に焦点が当たりました。
薬物治療の最適化に加え、再入院予測、自己管理、在宅モニタリングなど、「治す」から「悪化させない」への重心移動が鮮明です。
特にHFpEFは、心臓単独疾患ではなく、肥満・腎機能・炎症・フレイルを含む全身病として扱われるようになっています。
- 心不全患者の入院から退院までのマネージメント from JACC
- 在宅を含めた心不全縦断ケアモデルの有用性 from Circulation
- HFpEFを全身疾患として捉える新たな視点 from JACC HF
■加齢・フレイル
「高齢=仕方がない」という発想を明確に否定するエビデンスが積み重なりました。
フレイル、炎症、難聴といった要素が、心血管予後や認知機能と密接に関連することが示されています。特に難聴は、これまで見過ごされがちだった修正可能な予防ターゲットとして注目されました。
運動・栄養・睡眠といった非薬物介入が、老化のスピードそのものを左右する可能性も示唆されています。
- 高齢者における難聴と心血管予後の関連 from NEJM
- フレイル進行と心血管イベントリスク from Circulation
- 加齢に伴う炎症と心不全進展の関係 from JACC HF
■環境・生活環境という新たな心血管リスク
環境因子が「背景」ではなく独立した心血管リスクとして扱われ始めました。
熱波、大気汚染、夜間高温、都市構造が、血圧変動や脳卒中、心不全増悪に影響を与えることが示されています。特に「夜」という時間帯に注目した研究は、睡眠・自律神経・循環器疾患をつなぐ重要な示唆を与えました。
予防医療は、個人指導から社会構造への視点拡張が求められています。
- 気候変動と心血管死亡率の関連について from NEJM
- 夜間高温曝露と脳卒中発症リスク from EHJ
- 大気汚染と心不全発症リスクに関する前向き研究 from Circulation
■患者中心医療と意思決定
患者中心医療は理念ではなくアウトカムを左右する要素として位置づけられました。
患者報告アウトカム(PRO)、共有意思決定、多職種連携は、再入院率や治療継続率と密接に関連しています。
正しい治療だけでなく、「理解できる治療」「納得して選ぶ治療」「続けられる治療」が、循環器医療の質を規定する時代です。
- 患者報告アウトカムが心不全予後に与える影響 from Circulation
- 共有意思決定が慢性疾患管理に果たす役割 from JAMA
- 多職種連携による心血管疾患管理の意義 from JACC
■デジタルと医療
2025年の医療DXは、「派手さ」よりも実装可能性が重視されました。
AI、ウェアラブル、遠隔モニタリングは、医師の代替ではなく、判断の質を補強するツールとしての位置づけが明確になっています。
説明可能性、公平性、データの信頼性といった課題を乗り越えつつ、現場で「使えるDX」へと進化した一年でした。
- AIを用いた心不全リスク予測と臨床応用について from Circulation
- 循環器診療における説明可能なAIの課題と展望 from EHJ
- ウェアラブルデバイスによる心房細動の早期検出 from JAMA
2026年もWeekly Journal Scanを通して、多くの医学情報を発信してまいります。
皆さま、どうぞよいお年をお迎えください。
医療法人社団ゆみの
理事長 弓野 大
※毎週配信しているWeekly Journal Scanの中から特に興味深い報告をPick Upして当法人X、Antaaスライドに投稿しています!ぜひご覧ください。




