新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、当法人の取組みを振り返る
12月より新型コロナウイルスワクチン3回目の接種(ブースター接種)を始める方針で、ファイザー製ワクチンを全国の自治体や医療機関などへの配送が始まりました。
本邦において、2021年11月現時点で、新型コロナウイルス感染症への罹患や重症度は低い状況でありますが、これからの深刻な状況を回避するためにも、私たち法人のこれまでの取組みを振り返るとともに、体制の見直し、次への準備を始めています。
当法人では、新型コロナウイルス感染症に対して、
【予防】外来診療・在宅診療におけるワクチン接種、企業への職域接種、接種後の副反応対応
【診断】発熱外来を設置し迅速抗原検査、PCR検査
【治療】抗体カクテル療法を実施している宿泊療養施設への医師・看護師派遣
【管理】自宅療養者への往診
予防から管理まで、職員一丸となり感染拡大の防止に取り組んで参りました。また多くの後遺症で悩める患者さんへの、コロナ後遺症外来 >を設けております。
予防として、国全体の接種率の底上げが期待される中で始まった職域接種では、これまで計24,000回以上の接種をいたしました。
各企業と話し合いながら、会場レイアウト、必要物品などの準備段階から関わり、またワクチン接種後のアフターフォローとして、無料通信アプリ「LINE」による副反応相談、オンライン診療などにも対応してきました。
コロナ感染への治療として期待されている抗体カクテル療法(ロナプリーブ®)について、東京都の宿泊療養施設となっていた品川プリンスホテルでは、重症化を防ぐ「抗体カクテル療法」が実施され、当法人は東京都からの依頼を受け、民間の医療機関として対応にあたりました。対象は、症状出現から7日以内、50歳以上、心臓や呼吸器疾患など合併症があるなど重症化リスクを有する、酸素投与の要しない方が対象となりました。145例に投与を行いました(2021年11月時点)。発症から投与までの平均日数は5.0日、その後のホテル療養期間中の救急搬送はそのうち5例(3.4%)でした。この5例は全例発症から5日以上経って抗体カクテル療法がされており、発症からより早期での投与が望ましいと考えられます。
入院が必要と判断されても受け入れ先が見つからない自宅療養者へは、自治体、保健所、医師会と連携のうえ、往診やオンライン診療を行っております。
また、7月に東京・渋谷に新設した「ゆみの在宅医療管制塔センター>」では、24時間体制で看護師、医師により、ITを用いた遠隔支援を行いました。
日本では現在、ファイザー社、武田/モデルナ社、およびアストラゼネカ社(※)のワクチンが薬事承認されています。いずれのワクチンも、薬事承認前に、海外で発症予防効果を確認するための臨床試験が実施されており、ファイザー社約95%、武田/モデルナ社約94%、アストラゼネカ社約70%等の発症予防効果が確認されています(*1, 2, 3)。
効果の持続期間については、ファイザー社によると、2回目接種後2ヶ月から4ヶ月時点での発症予防効果は90%、4ヶ月から6ヶ月時点での発症予防効果は84%との報告があり(*4)、武田/モデルナ社では、2回目接種後2ヶ月から4ヶ月時点での発症予防効果は94%、4ヶ月から6ヶ月時点での発症予防効果は92%との報告がありました(*5)。
アメリカで行われたワクチンの有効性の変化を調べる大規模疫学調査では、2020年12月から2021年8月の間に、2回のワクチン接種を完了した人のSARS-CoV-2感染予防効果は経時的に低下したが、COVID-19関連の入院予防効果はデルタ株に対しても90%と維持されていたとの報告があります(*6)。
当法人のコロナ対応について報告させていただきましたが、これからの第6波に備え、感染予防と重症化予防が重要であり、そのためにもワクチンの継続的な使用が必要となります。私たちは、インフルエンザと一緒に暮らすことを学んだように、この新型コロナウイルスと一緒に暮らす方法をさらに学んでいく必要があります。
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PMDAの審査報告書(アストラゼネカ社のワクチン)
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Thomas SJ, et al. N Engl J Med. 2021 Nov 4;385(19):1761-1773
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El Sahly HM, et al. N Engl J Med. 2021 Nov 4;385(19):1774-1785
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Tartof SY, et al. Lancet. 2021 Oct 16;398(10309):1407-1416