急性・慢性心不全診療心不全ガイドライン:vol.2 定義・分類

2018年05月21日

今回は、心不全の定義、進展ステージ、分類について概説します。

 

1.心不全の定義

これまでは、急性・慢性心不全と別々な定義でしたが、明らかな症状や兆候が出る以前からの早期治療介入の有用性が確認されるようになり、「心不全とは、なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と一つの定義になりました。

また、改訂のポイントで述べたように、心不全を国民によりわかりやすく理解して貰うため、一般向けの定義が発表となっています。「心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」

さらに、アメリカ心臓病学会およびヨーロッパ心臓病学会のガイドラインを参考に、左室収縮能(LVEF)による心不全の分類が採用されています。つまり、HFrEFをLVEF40%未満、HFpEFをLVEF50%以上、そして、HFmrEFをLVEF40%以上50%未満と分類しています。

 

2.心不全の進展ステージ

2005年のアメリカ心臓病学会ガイドラインで提唱されたものを準拠して進展ステージ分類が採用されています。各ステージにおける治療目標はステージの進行を抑制することにあります。ステージA(リスクステージ)では心不全の原因となる器質的心疾患の発症予防を、ステージB(器質的心疾患ステージ)では器質的心疾患の進展抑制と心不全の発症予防を、そしてステージC(心不全ステージ)では予後の改善と症状を軽減することを目標とします。ステージD(治療抵抗性心不全ステージ)における治療目標は,基本的にはステージCと同様ですが、終末期心不全では症状の軽減が主たる目標なります。

また、ステージCの基準に既往の症状も含まれ、ステージだけでは重症度分類ができないため、運動耐容能を示す指標であるNYHA心機能分類も進展評価に使われます。

 

3.心不全の分類

心不全をカテーテルを用いた血行動態からみる方法、身体所見から得られるリスク層別化の方法、急性期の初期対応のために血圧を軸とした方法、の3つの分類が紹介されています。①Forrester分類(フォレスター分類)は右心カテーテル検査で得られる血行動態指標(肺毛細血管楔入圧、心係数)を用いた心不全重症度分類で、観血的検査であるため慢性心不全の重症度評価などはできません。②Nohria-Stevenson分類(ノリア・スティーブンソン分類)は、身体所見から得られる低灌流所見およびうっ血所見から心不全患者のリスク層別化をする分類です。簡易で、非観血的に評価できます。③クリニカルシナリオ(clinical scenario; CS)分類は循環器専門医以外の医師が救急外来での初期対応導入を迅速に行えるように作られた、血圧および病態による分類です。

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YUMINO's eyes

我が国では、心不全は65歳以上の死因で癌を抜き、第一位となりました。これからも、心不全患者さんはどんどん増えていくことが予想されます。それにもかかわらず、癌と比べて、啓発活動が十分に行われていないため、一般のひとの病気への認識もまだ足りないと考えます。その一因としては、若者や働き盛りの人の発症が少なく、高齢者の病気であることもあるかもしれません。しかしながら、これからも高齢者人口が増え続けることを考えると、いまのうちにしっかりと心不全の啓発活動を行い、国民への心不全予防を含めたセルフケアの意識を高める必要があると考えます。また心不全のステージ分類に関しては、症状が出現する前のステージABが新しく提言され、まさに心不全の予防を意識したステージの作成ができ、一方で症状が進行してきた段階で積極的な心不全治療とともに、早い段階から緩和ケアの意識を並行してもつことの重要性も述べられています。心不全の分類については、身体に負担のあるカテーテル検査によるものから、身体所見から診ることができる心不全のリスク評価までが記載されております。これから、心不全は生活の場である地域でみることを考えると、いかに非侵襲的にリスク評価し、病診連携にて病院でなくてはいけない検査や治療の必要性をより明確化し、心不全医療の機能分化をさらに活性化する必要性を感じています。

 

参考文献

  • 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)

弓野 大

  

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