患者さんの日常生活に介入し、 多職種による細やかな管理を通して 心不全の再入院を防ぎたい。
市中病院で数々の心不全患者さんと向き合うなかで「心不全の再入院を防ぐには、在宅医療しかない」という感情が芽生えた矢先、医局の先輩の紹介で、当時開院したばかりのゆみのハートクリニックを知る。地元・福島で循環器専門医としての経験を積みながら、学会などでYUMINOの動きを追い続けた末に入職。細やかな状態管理と情報共有を大切にしながら業務にあたり、患者さんのみならずスタッフからの信頼も厚い。
心不全の在宅医療を実践できる環境に
魅力を感じ、学位取得後にYUMINOへ。
私は、医局にいた頃から循環器疾患の患者さんをみていたのですが、心不全の場合、院内だけで患者さんの状態を管理するのはとても難しいと感じていました。増悪のリスクは食事、服薬、運動の状況など、日常生活の過ごし方によって変化します。なので、ご自宅に医師が出向き、ご本人の様子だけでなくご家族との関わり方や、生活環境も拝見しながら、多職種とも連携して細やかに管理することができれば、入院せずに済む患者さんも増えるのかな…と考えるようになりました。当時接していた患者さんはご高齢の方が多かったのですが、「家で過ごしたい」と口にされる方が多かったので、在宅医療に関わりたい気持ちがさらに強まりました。
そんな時、医局の先輩が弓野理事長の知り合いだったことから、ゆみのハートクリニックが開院したことを知りました。心不全の在宅医療の事例は聞いたことがなかったので、とても興味を引かれて、それ以降はYUMINOが学会で発表するたびに足を運んだり、HPをチェックしたりして動きを追い続け、学位を取得して数年経った後に入職を決めました。
入職後、実際に在宅医療の現場に入ってみると、心不全の再入院防止には服薬指導の徹底が大切であることや、介護に対してストレスを抱えるご家族のケアの重要性など、ご自宅に行ってみないとわからないことがたくさんあると再認識しました。そういったことを医局にいた頃からわかっていれば、ご自宅で過ごしたいと願う患者さんの思いをもっと叶えられたのでは…とも感じますし、日々学ぶことが多いです。
わからないことはすぐ相談できる環境。
医局にいた頃にみていたのは、ほとんどが心不全の患者さんでした。YUMINOは循環器疾患に強みを持っていますが、実際に私がみている患者さんの症状は、心不全やがんなど多種多様です。
そのため、入職して間もない頃は末期がんの患者さんの疼痛コントロールにとても苦労しました。都度周りの先輩医師に相談して、なんとか乗り切っていたのを思い出します。たとえご自身がどんなに忙しくても、いつでも親身になって相談に乗ってくれる先生ばかりなので、とても助かりました。YUMINOでは、わからないことを聞いて迷惑がる人はいません。むしろ、「どうして聞かないの」というぐらいの雰囲気です。在宅医療の現場では、対応に悩むことが日々起こるので、わからないことを素直に聞く姿勢がYUMINOで働くうえでは必要なのかな、とも感じます。
当然、人に頼るだけでなく、自分ができることを精一杯やることも重要です。日々しっかりと患者さんと向き合って細かい変化を感じ取り、WEB上で診療情報を記録して管制塔や訪問看護ステーションと共有しています。その情報を基に、患者さんからの緊急連絡時は看護師さんがサポートしてくれるので、患者さんもより安心してご自宅で療養できますし、YUMINOのチーム医療の素晴らしさを実感しています。
在宅で心疾患をみるノウハウを学び、
ゆくゆくは地元に恩返しをしたい。
YUMINOでは毎週抄読会やCQがあるほか、学会発表時は専門部署が手厚くサポートしてくれますし、定期的に看護師やソーシャルワーカーなど多職種とのカンファレンスもあるので、若手医師でも学びながら成長できる環境が整っています。入職後に驚いたのは、前職と比べて圧倒的にソーシャルワーカーと関わる機会が多いこと。これまでは言葉を交わす機会すらほぼありませんでしたが、今は地域の病院との連携や、患者さんの生活環境整備、ケアマネジャーや訪問薬局などとの連絡など、在宅医療に必要なあらゆる要素をサポートしてもらっています。YUMINOのソーシャルワーカーは、困ったことは何を聞いても答えてくれるので、初めて在宅医療に関わる医師でも安心して働けますし、私自身も大いに信頼しています。
今は常勤で週5日間勤務していますが、休暇は毎週2日連続で取れているので、ワークライフバランスも充実しています。ドライブがてら、たびたび大好きな地元・福島に帰省するのが良い気分転換になっています。
そんな私のささやかな夢は、YUMINOで学んだ在宅医療のノウハウを、地元に持ち帰ることです。訪問診療を行う病院は数多くありますが、心疾患の患者さんとなると、専門性が高まるため、対応してもらえる病院は少なくなります。かつて、住み慣れた環境で療養する願いを叶えられない患者さんを多くみてきました。福島で心疾患に強みを持つ訪問診療の拠点をつくることができたら、少しは地元に恩返しができるのかな…。そう思いながら、多くの症例と向き合い、学び続けています。